翻訳コラム
2022.11.08
翻訳会社の選定
私は以前、製造メーカーのドキュメント部門に所属していました。部門には翻訳を専門とするチームもありました。そこで、製造した製品の取扱説明書やマニュアルなどのドキュメントや、エンジニアの出張用の資料などを作成していました。
翻訳の仕事がオーバーフローする場合には、外部の翻訳会社に翻訳を外注することもありました。参考になればと思い、翻訳をお願いする際のことをお話したいと思います。
まずは、安全のために、翻訳者個人ではなく会社を選ぶことにしました。
自分たちが翻訳者であるからといって、翻訳会社選びに特別な秘訣などありません。翻訳会社を選ぶのはひと苦労でした。世の中に翻訳会社は星の数ほどあります。有名どころは品質にも自信がありそうですが料金もそれに比例するようです。ツテを探したりネットで信頼できそうなところをいくつか選びました。
ピックアップした数社に「トライアル」をお願いしました。軽く1ページ未満の製品説明の翻訳を提出していただき、自分たちでチェックしました。まずは、こちらが指定した期限までにどのくらいの精度で提出していただけるかをチェックしました。内容をチェックするのは、英語が得意というよりは、エンジニア畑の方で英語が得意な方にお願いしました。それは、その文書の性格上、英語の自然さよりも内容の正確さを求めていたからです。
文法的な間違いはありませんでしたが、製品について無知がゆえの間違いが散見されました。それらが、例えば、その分野において基礎知識があればわかるものなのか、ホームページ等で製品について下調べをすればわかるものなのか、または会社内部の者ではなくてはわからない事柄で仕方ないと思えるか、を判断して、合否を判断しました。また、翻訳だけではなく、文書をこちらの規定どおりに編集できるかもチェックしました。
合格が決まった翻訳会社とは、メールなどで作業報告や質問等、オンラインでデータのやりとりをすることになりました。顔を合わせるということはほとんどなかったと思います。最初に、必要な契約書を結びます。そして、詳細な内容とスケジュールを打ち合わせます。翻訳する前に、関係するテンプレートや編集方法の指南書、用語集や参考資料などを渡します。
最初の一歩が肝心です。なぜなら、文書を更新するときには、同じ会社に頼んだ方が効率よく進められるので、長い付き合いになるかもしれないからです。以上、翻訳会社を選定したときの話です。ご参考になればと思います。
(藤井)
執筆者プロフィール
イギリス生まれ北海道育ち。小学生のときにアメリカで1年半過ごす。津田塾大学卒
日本の半導体メーカーで技術系の翻訳に約20年従事。現在はフリーランス